3月3日がくる度思い出す母のこと
昨日はひな祭りでしたね。
ひとり暮らしなので特に何をするわけでもないけど、3月3日がくる度に思い出す母のエピソードがある。
実家は狭く、祖母が買ってくれた7段飾りのお雛様を出すと6畳の母の部屋の半分がお雛様で埋まっていた。私がハタチを超えた頃、「狭くなるからもう出さなくていいんじゃない?」と言うと、「あんたがお嫁に行けなかったらどうすんの!」と私が家を出るまで毎年必ず飾っていた。
母は行事を大切にする人で、お正月もクリスマスも親戚を集めてたくさん料理を作って振舞っていた。ひな祭りも例外ではなく、6畳の母の部屋でものすごい存在感を放っているお雛様を居間から眺めながら、ひなまつりパーティーを開催する。
ちらし寿司、サンドウィッチ、からあげ、茶碗蒸し、おひなさまケーキ。
そして、ピラミッド型に積まれた大量のおいなりさん。
ちらし寿司があるのに、大量のおいなりさん。
母「ほらいっぱい作ったんだからおいなりさんも食べなさい!」
私「もうお腹いっぱいだよ~」
母「あんた好きでしょ、おいなりさん」
私「好きだけどさ~」
母「あんたが好きって言うから作ってるのに!」
…ん?
私が好きな食べ物は?と聞かれた時、トップ3を上げるならばマグロ(お刺身でもお寿司でも可)、アップルパイ、カルボナーラ。おいなりさんも嫌いではないけれど、トップ3にランクインする程ではない。
母「おいなりさん、おいなりさんって言うから作ってるのにー」
私「いや、そんなに言ってないと思うけど…」
母「言ってたよ、小さい時!」
私「小さい時って(笑)!いつ(笑)!」
母「幼稚園の時!」
この時、私は21歳。幼稚園の年長さんだった私がおいなりさん好きを公言していたとしても、そこから15、6年は経過している。
母「お弁当もおいなりさんじゃないとヤダって言うから毎日おいなりさん作って入れてやってたじゃない!」
そういえばお弁当にはよくおいなりさんが入っていて、遠足のお弁当は決まっておいなりさんだった。
私「嫌いじゃないけどさー、今そんなに好きじゃないよー」
母「…え!?そうなの!?!?」
私はこの時の母の表情を忘れられない。目を丸くして、驚く人の見本みたいに驚いていた。
私「そうだよ、だって幼稚園の頃でしょ?もう味の好みも好きな食べ物も変わってるでしょ(笑)」
母「えぇぇ…そうなのぉ…?好きって言ってたから好きだと思ってた…」
ちょっとしょんぼりしながら母はこう言った。
母「そういうことは早く言ってよ!!」
涙が出る程笑った。我が母ながら思い込みが激しすぎるし、それが勘違いだったとわかったあとの切り返しが八つ当たりとは。
私はあの時おいなりさんピラミッドを残さず食べた。でも翌年の我が家のおひなさまパーティーからおいなりさんが姿を消した。
私「今年はおいなりさんないんだね」
母「だってあんた好きじゃないんでしょ!」
1年経ってもふてくされていた。おいなりさんがないのでちらし寿司をお腹いっぱい食べた。
3月3日がくると母のことを思い出す。
今年もあの6畳の母の部屋にはお雛様が飾られているのかなぁ。
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